本ゼミでは,理想的な未来のネットワークとIoT(Internet of Things)社会の実現を目指して,新しいネットワーク技術とセキュリティ技術を創出する研究を進めています.
IoT(Internet of Things)は,「様々なモノ(物)がインターネットにつながること」を指し,米ガートナーでは「物理的なモノ(物体)のインターネットであり,物体には,自らの状態や周辺状況を感知し,通信し,何かしらの作用を施す技術が埋め込まれている」と定義しています. IoTにより,あらゆるモノがつながるようになると,モノとモノとが連動しお互いが自律的に動作するようになり,人が介在することなく,モノ同士がつながり自動的にサービスを提供するシステムの実現が可能となります.
IoT(Internet of Things)とホームネットワークの事例を紹介します.
まず家の玄関にカメラと人感センサを設置しておきます.人が家に帰宅する際に,玄関で人の持ち物と体温を検知します. 持ち物がビールとレンタルビデオで,体温が高いと判断するとその情報をインターネット上で処理し,家電同士が連携を行い,(体温の情報を基に適当な時間に)自動的にお風呂が沸き,(持ち物のビールの情報を基に適当な時間に)ロボットが食事とコップを用意し,(持ち物のレンタルビデオの情報を基に適当な時間に)オーディオ機器が動作し,人が介入することなく,最適なサービスを受けることができるようになります(図1).
本ゼミでは,このような理想的な未来のネットワークとIoT(Internet of Things)社会の実現を支援する基盤技術を創出する研究を進めていきます.
● 情報指向ネットワークにおけるコンテンツ配信技術に関する研究
現在,映像コンテンツのトラヒックが全世界の総トラヒックの80%に達しており,映像コンテンツ配信をネットワーク側でサポートするコンテンツ指向ネットワーク(CCN:Content Centric Networking)がインターネットの次の新世代ネットワークとして注目されています.
現在のインターネット(ホスト指向ネットワーク)を図2に,コンテンツ指向ネットワーク図3に示します.
図2に示すように,現在のインターネット(ホスト指向ネットワーク)では,ユーザが映像コンテンツを視聴(取得)したい場合, (1) 検索エンジンで視聴したい映像コンテンツのURL(コンテンツの場所)を探し,(2) 見つかった映像コンテンツを保持するサーバのIPアドレス(ホストの場所)を(DNSサーバから)取得し,(3) そのIPアドレスのサーバに接続して,映像コンテンツを取得する必要があります. 図2では,ユーザAがサーバのIPアドレス(ホストの場所)をDNSサーバから取得し(図2の①),そのIPアドレスのサーバに接続して,映像コンテンツを取得しています(図2の②). このように,IPアドレス(ホストの場所)に基づいた情報取得を行う場合,もし映像コンテンツを保持するサーバが変わると,再度,同じの手順でIPアドレス(ホストの場所)を取得し,そのIPアドレスのサーバに接続して,映像コンテンツを取得することになります. さらに,このような「1対1」の基づく通信形態では,多くの通信帯域も必要になります. コンテンツ指向ネットワークでは,ユーザはコンテンツ識別子を用いてコンテンツの要求を行い,コンテンツソースあるいはネットワーク内キャッシュからコンテンツを取得する.コンテンツは,ユーザに返信・転送する際に,ネットワーク内の要求経路上の中継機器にもキャッシュされる.これにより,ネットワーク資源を効率的に利用し,低遅延の通信を実現している.